前 文
現行憲法
政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないようにすることを決意し、
改憲草案
先の大戦による荒廃や幾多の大災害を乗り越えて発展し、
政府による戦争をしない決意 が前文からなくなります。
自民党の改憲草案では憲法全体で「戦争を絶対にしない」という記載が無くなりました。
そして、「我々は、美しい国土を守り」と国民に国防義務を課しています。
また、これまで憲法前文に天皇に関する記載はありませんでしたが「天皇を戴く国家」と記載され、 改憲草案1条では天皇を元首であると規定しています。
一方で現行憲法の前文に記載の無かった「基本的人権の尊重」が記載されました。 しかし、後述するように改憲草案12条では基本的人権より国益が優先される旨が記載されています。
また、これまで憲法前文に天皇に関する記載はありませんでしたが「天皇を戴く国家」と記載され、 改憲草案1条では天皇を元首であると規定しています。
一方で現行憲法の前文に記載の無かった「基本的人権の尊重」が記載されました。 しかし、後述するように改憲草案12条では基本的人権より国益が優先される旨が記載されています。
第9条
現行憲法
陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない
改憲草案
内閣総理大臣を最高指揮官とする国防軍を保持する
「徴兵制」を合憲とする事が可能になります。
自民党の改憲草案では新たに国防軍に関する記載が追加されました。
第二章の章題は「戦争の放棄」から「安全保障」に変更されています。
国防軍は「国際的に協調して行われる活動」を行う事ができると記載され、「集団的自衛権」を認める内容になります。 これにより米軍などの同盟国の軍隊が攻撃された際に国防軍が一緒に戦って防衛する事が可能になります。 また、国防軍に軍事審判所の設置も明記され、軍人等の職務の遂行上の犯罪などが通常の裁判所ではなく軍事審判所で裁かれるようになります。
そして9条の3には「国民と協力して」とあり改憲案前文3段と共に国民に「国防義務」を課しています。 18条2項では「意に反する苦役」に服されない事を定めていますが、それは12条で国益に反しない場合に限定しており、 国防を最大の国益として前述の「国防義務」と共に「徴兵制」を合憲とする事が可能になっています。
アメリカの情報公開により、戦争時に自衛隊が米軍の指揮下に入る事が日米合同委員会で合意されている事が判明していますが、 国防軍も同様の合意で実質的に米軍の下部組織となる可能性があります。
国防軍は「国際的に協調して行われる活動」を行う事ができると記載され、「集団的自衛権」を認める内容になります。 これにより米軍などの同盟国の軍隊が攻撃された際に国防軍が一緒に戦って防衛する事が可能になります。 また、国防軍に軍事審判所の設置も明記され、軍人等の職務の遂行上の犯罪などが通常の裁判所ではなく軍事審判所で裁かれるようになります。
そして9条の3には「国民と協力して」とあり改憲案前文3段と共に国民に「国防義務」を課しています。 18条2項では「意に反する苦役」に服されない事を定めていますが、それは12条で国益に反しない場合に限定しており、 国防を最大の国益として前述の「国防義務」と共に「徴兵制」を合憲とする事が可能になっています。
アメリカの情報公開により、戦争時に自衛隊が米軍の指揮下に入る事が日米合同委員会で合意されている事が判明していますが、 国防軍も同様の合意で実質的に米軍の下部組織となる可能性があります。
※「日米合同委員会」とは日米安全保障条約第6条に基づく日米地位協定の第25条に規定された日本の官僚と米軍の会議。
ここでの合意内容は機密として国民に公開されないが、 後述する統治行為論により合意内容は憲法より上位の存在となる。
それによって、ここでの各種合意内容が根拠となり米軍には国内法が適用出来ない。
第12条
現行憲法
国民は、常に公共の福祉のために自由及び権利を利用する責任を負う。
改憲草案
国民の自由及び権利には責任及び義務が伴う。公益及び公の秩序に反してはならない。
基本的人権の対価に責任と義務が求められ、基本的人権より国益と社会秩序が優先されます。
公共の福祉とは個々の人権同士が衝突した際に社会全体の利益の為に人権を調整する原理の事
公益及び公の秩序とは国益と社会秩序の事で人権同士が衝突しない場合にも適用されます
現行憲法では人権が制約されるのは人権同士が衝突した場合のみでしたが、
改憲案では国益に反する場合にも人権が制限されます。
また、国際人権規約では委員会が公共の福祉で人権が制約される範囲が必要以上に広がらないよう法律に明記することを求めていますが、 改憲案では制約の範囲が広がっています。
基本的人権よりも国益が優先され、全体主義や軍国主義が加速する形となります。
そして、13条では人権の尊重が「個人として」から「人として」に変更されています。 これは個人の尊重は憲法で保証されず集団の人としてのみ認識される事を示しており、憲法が多様性を否定する事に繋がります。
また、国際人権規約では委員会が公共の福祉で人権が制約される範囲が必要以上に広がらないよう法律に明記することを求めていますが、 改憲案では制約の範囲が広がっています。
基本的人権よりも国益が優先され、全体主義や軍国主義が加速する形となります。
そして、13条では人権の尊重が「個人として」から「人として」に変更されています。 これは個人の尊重は憲法で保証されず集団の人としてのみ認識される事を示しており、憲法が多様性を否定する事に繋がります。
※「公共の福祉」では例えば「報道の自由」と「プライバシー権(人格権)」が相反した場合、
一般人にはプライバシー権が、国会議員などの公人には報道の自由が優先されます。
つまり、人権を制限出来るのは人権のみとなります。
「公益及び公の秩序」では、人権同士の相反が無くても国益に反すると判断されると「報道の自由」などの人権が制限されます。 つまり人権が国家によって制限されます。
「公益及び公の秩序」では、人権同士の相反が無くても国益に反すると判断されると「報道の自由」などの人権が制限されます。 つまり人権が国家によって制限されます。
第18条
現行憲法
何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。
改憲草案
何人も、社会的又は経済的関係において身体を拘束されない。
「政治的な」または「軍事的な」拘束や拷問が可能になります。
奴隷的拘束に対して条件が追加され、「政治的な」または「軍事的な」拘束が可能になります。
また、36条の拷問の禁止から「絶対に」の文言が削除され、
前述の12条改正と合わせて国益や社会秩序のためであれば政治的または軍事的な拷問が可能になります。
第19条の2
新設
何人も、個人に関する情報を不当に取得し、保有し、又は利用してはならない。
国会議員などの公人に対する報道の自由が制限されます。
後述する改憲草案21条で表現の自由やそこから派生する権利の報道の自由が国益に反する場合に制限されるため、
国益に反すると判断された場合に国会議員などの公人の実名報道が出来なくなる可能性があります。
これにより権力行使に対する監視というマスコミの使命は果たせななくなります。
自民党の改憲草案Q&Aではこの条文をプライバシーに関する権利と説明していますが、 実際の条文は「何人も〜ならない」と権利ではなく国民の義務として記載されており、 「何人」とは「私人」を指しているため国家による個人情報収集は規制していません。
自民党の改憲草案Q&Aではこの条文をプライバシーに関する権利と説明していますが、 実際の条文は「何人も〜ならない」と権利ではなく国民の義務として記載されており、 「何人」とは「私人」を指しているため国家による個人情報収集は規制していません。
第20条
現行憲法
いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
改憲草案
国は、いかなる宗教団体に対しても、特権を与えてはならない。
「宗教団体による政治上の権力を行使」が可能になります。
「政治上の権力」とは、国又は地方公共団体に独占されている統治的権力で、
立法権、裁判権及び課税権、行政機関の職員の任免権等の行政権が該当します。
改憲案20条3項では「社会的礼儀又は習俗的行為の範囲を超えないもの」については国による宗教活動が可能になります。 そして改憲案89条では上記の行為の為に国から宗教団体に国の公金の支出も可能になっています。
戦前、国家神道に特権的な地位が与えられ軍国主義が進んだ経緯を踏まえて 日本国憲法に盛り込まれた政教分離原則が緩和されます。
改憲案20条3項では「社会的礼儀又は習俗的行為の範囲を超えないもの」については国による宗教活動が可能になります。 そして改憲案89条では上記の行為の為に国から宗教団体に国の公金の支出も可能になっています。
戦前、国家神道に特権的な地位が与えられ軍国主義が進んだ経緯を踏まえて 日本国憲法に盛り込まれた政教分離原則が緩和されます。
第21条
現行憲法
集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
改憲草案21条2項追加
公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない。
国が「公益や公の秩序を害することを目的とした」と判断した場合に一切の表現の自由が奪われます。
公益及び公の秩序とは国益と社会秩序の事で人権同士が衝突しない場合にも適用されます
21条の表現の自由に2項が追記され国益や社会秩序を害することを目的と判断された活動及び結社が認められなくなります。
自民党の改憲草案Q&Aによるとこれはオウム真理教に対して破壊活動防止法が適用できなかったことの反省などを踏まえてとの事ですが、 破防法は現行憲法でも「明白かつ現在の危険」の存在の原則に基づいて 表現及び結社の自由を制限する事が可能であり破防法の適用条件を緩和する事も可能です。 しかし当時「市民、労働団体も対象になりかねない」との判断から緩和が見送られました。
表現には活動が不可欠であり、今回の改憲案で結社のみならず取材や報道を含めた表現の自由の活動が、 目的の恣意的な判断で制限される事が合憲になります。これは戦前の治安維持法における目的遂行罪の復活を意味します。
自民党の改憲草案Q&Aによるとこれはオウム真理教に対して破壊活動防止法が適用できなかったことの反省などを踏まえてとの事ですが、 破防法は現行憲法でも「明白かつ現在の危険」の存在の原則に基づいて 表現及び結社の自由を制限する事が可能であり破防法の適用条件を緩和する事も可能です。 しかし当時「市民、労働団体も対象になりかねない」との判断から緩和が見送られました。
表現には活動が不可欠であり、今回の改憲案で結社のみならず取材や報道を含めた表現の自由の活動が、 目的の恣意的な判断で制限される事が合憲になります。これは戦前の治安維持法における目的遂行罪の復活を意味します。
第21条の2
新設
国は、国政上の行為につき国民に説明する責務を負う。
情報公開は保証されません。
自民党の改憲草案では新たに「国政上の説明義務」が追加されました。
「知る権利」は民主主義政治にとって必要不可欠である自由な討論において 国民が争点を判断する際に必要な意見や情報に自由に接しうることを当然の前提として 「表現の自由」から派生する権利で、現行憲法で保証されている権利です。 情報公開請求権や報道・取材の自由は「知る権利」を基にした権利です。
前述の21条改正案で「知る権利」の基となる「表現の自由」は国益や社会秩序に反すると判断された場合に制限されます。 すると例えば原発事故が起きた際に放射能汚染の情報が社会の混乱を招く等の理由で公開制限する事が合憲になります。 21条の2では情報公開を「知る権利」としてではなく「国の説明責任」として記載しています。 国益や社会秩序で制限された情報公開請求権は国の説明にとどまり、公文書の開示等は保証されません。
「知る権利」は民主主義政治にとって必要不可欠である自由な討論において 国民が争点を判断する際に必要な意見や情報に自由に接しうることを当然の前提として 「表現の自由」から派生する権利で、現行憲法で保証されている権利です。 情報公開請求権や報道・取材の自由は「知る権利」を基にした権利です。
前述の21条改正案で「知る権利」の基となる「表現の自由」は国益や社会秩序に反すると判断された場合に制限されます。 すると例えば原発事故が起きた際に放射能汚染の情報が社会の混乱を招く等の理由で公開制限する事が合憲になります。 21条の2では情報公開を「知る権利」としてではなく「国の説明責任」として記載しています。 国益や社会秩序で制限された情報公開請求権は国の説明にとどまり、公文書の開示等は保証されません。
第22条
現行憲法
何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
改憲草案
何人も、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
経済の規制が緩和され、経済強者の営業の自由を制限することが困難になり、経済弱者や国産品等が保護されにくくなります。
公共の福祉とは個々の人権同士が衝突した際に社会全体の利益の為に人権を調整する原理の事
「営業の自由」は憲法上の「職業選択の自由」と「財産権」を根拠としています。
営業の自由が公共の福祉で制限されなくなると、
独占禁止法や小売商業調整特別措置法などの弱者を保護する法律が違憲になる可能性があり、
市場が経済強者によって支配されて消費者が被害を被ります。
また、公共の福祉の原理が撤廃される為、 人々の健康権よりも営業の自由が優先され健康に被害の出る農薬などの販売を規制する事が難しくなります。
12条で「国民」の権利には公益や社会秩序に反しない事が前提とされていますが、法人はその限りではありません。
また、公共の福祉の原理が撤廃される為、 人々の健康権よりも営業の自由が優先され健康に被害の出る農薬などの販売を規制する事が難しくなります。
12条で「国民」の権利には公益や社会秩序に反しない事が前提とされていますが、法人はその限りではありません。
第24条
新設
家族は、互いに助け合わなければならない。
家族がいる場合に生活保護を受ける事が出来なくなります。
自民党の改憲草案では新たに「家族、婚姻等に関する基本原則」が追加されました。
前文にも同様の家族の助け合いの記載があり、 これを根拠に家族がいる人の生活保護を拒否する事が合憲になります。
世界人権宣言16条3項に「家族は、社会の自然かつ基礎的な単位であり、社会及び国による保護を受ける権利を有する。」とありますが、 「互いに助け合わなければならない。」との記述はありません。
前文にも同様の家族の助け合いの記載があり、 これを根拠に家族がいる人の生活保護を拒否する事が合憲になります。
世界人権宣言16条3項に「家族は、社会の自然かつ基礎的な単位であり、社会及び国による保護を受ける権利を有する。」とありますが、 「互いに助け合わなければならない。」との記述はありません。
第25条の2
新設
国は、国民と協力して、国民が良好な環境を享受することができるようにその保全に努めなければならない。
国家に環境の改善を求める権利が縮小されます。
自民党の改憲草案では新たに「環境保全の責務」が追加されました。
「環境権」は良好な環境の中で生活を営む権利として現行憲法13条の「幸福追求権」を基に保証される権利です。 この環境権は国家が国民に対して保証する権利でしたが、改憲草案25条の2で「国民と協力して」と記載する事により 国民にも環境保全義務を追加しました。これにより国民の権利から義務に変更されました。 環境権は国家に環境の破壊を禁じる自由権的側面と、 国家に環境の改善を求める社会権的側面がありますが、 後者が縮小される形となります。
「環境権」は良好な環境の中で生活を営む権利として現行憲法13条の「幸福追求権」を基に保証される権利です。 この環境権は国家が国民に対して保証する権利でしたが、改憲草案25条の2で「国民と協力して」と記載する事により 国民にも環境保全義務を追加しました。これにより国民の権利から義務に変更されました。 環境権は国家に環境の破壊を禁じる自由権的側面と、 国家に環境の改善を求める社会権的側面がありますが、 後者が縮小される形となります。
第29条の2
現行憲法
財産権の内容は公共の福祉に適合するように法律でこれを定める。
改憲草案
財産権の内容は公益及び公の秩序に適合するように法律で定める。
この場合において、知的財産権については、国民の知的創造力の向上に資するように配慮しなければならない。
この場合において、知的財産権については、国民の知的創造力の向上に資するように配慮しなければならない。
国内企業の特許権より経済活動が優先されます。
公共の福祉とは個々の人権同士が衝突した際に社会全体の利益の為に人権を調整する原理の事
公益及び公の秩序とは国益と社会秩序の事で人権同士が衝突しない場合にも適用されます
財産権より国益が優先される様になりました。これにより公共事業の為に国が強制的に土地を買い上げる事などが可能になります。
また、特許権などの知的財産権より経済活動が優先される旨が新たに追加されました。 しかし、日本では統治行為論により憲法より条約が優先されるため、 特許協力条約等により海外企業が保有する特許にはこの憲法条文が適用されません。 すると国内企業のみが特許権の保護がされにくい状況となり、国内の研究開発が縮小する可能性があります。
また、特許権などの知的財産権より経済活動が優先される旨が新たに追加されました。 しかし、日本では統治行為論により憲法より条約が優先されるため、 特許協力条約等により海外企業が保有する特許にはこの憲法条文が適用されません。 すると国内企業のみが特許権の保護がされにくい状況となり、国内の研究開発が縮小する可能性があります。
※「統治行為論」とは砂川事件にて
在日米軍の日本国内への駐留の合憲性を判断した際に示された理論で
「国家統治の基本に関する高度な政治性」を有する国家の行為について裁判所が判断をしないとする理論です。
これにより日本では条約が憲法に違反しているかの判断が出来なくなりました。 しかし内容的に違憲条約でも現行憲法98条2項(改憲草案101条の2)にて条約を遵守しなくてはなりません。
これにより日本では条約が憲法に違反しているかの判断が出来なくなりました。 しかし内容的に違憲条約でも現行憲法98条2項(改憲草案101条の2)にて条約を遵守しなくてはなりません。
第47条
現行憲法
選挙区、投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は、法律でこれを定める。
改憲草案追加
この場合においては、各選挙区は、人口を基本とし、行政区画、地勢等を総合的に勘案して定めなければならない。
「一票の格差」が合憲になります。
違憲状態にあるとの最高裁の判決が続き、最高裁から国会に制度自体の抜本的改革が求めらる「一票の格差」を合憲とするものです。
これにより衆議院議員選挙区画定審議会設置法第3条を改正する必要が無くなります。
現在、選挙区により最大で一票の効力に2倍の差が出ており、これは人口の最も少ない選挙区では2票持っているのと同じ事になります。
自民党は「改憲4項目」にて「合区解消」を掲げており、人口が少ない選挙区が統合される事を防ごうとしています。 これは自民党の支部と各種業界団体の繋がりによる票田が多くある地方にて議席を多く獲得するためのものですが、それにより一票の格差が広がり民意が歪められてしまいます。 また、選挙区で人口の偏りが起きると票田となる宗教団体や利害関係組織による組織票の影響力が大きくなり選挙が操作しやすくなります。
現在、選挙区により最大で一票の効力に2倍の差が出ており、これは人口の最も少ない選挙区では2票持っているのと同じ事になります。
自民党は「改憲4項目」にて「合区解消」を掲げており、人口が少ない選挙区が統合される事を防ごうとしています。 これは自民党の支部と各種業界団体の繋がりによる票田が多くある地方にて議席を多く獲得するためのものですが、それにより一票の格差が広がり民意が歪められてしまいます。 また、選挙区で人口の偏りが起きると票田となる宗教団体や利害関係組織による組織票の影響力が大きくなり選挙が操作しやすくなります。
第56条
現行憲法
両議院は、各々その総議員の三分の一以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない。
改憲草案
議事を開きの部分を削除
野党が審議拒否しても、少数の与党議員だけで審議を進められる様になります。
日本の国会では与党による答弁拒否や強行採決への対抗手段として野党による審議拒否が行われます。
党議拘束の強い日本の国会では、過半数を占める与党の政党内で決定された議案をそのまま可決する事が可能であり
形式的な審議しかされない場合も多く、野党には最終的に審議拒否しか手段がないのが現状です。
その最終手段を奪ってしまうことは、審議の形式化を加速させ過剰に行政府の執行機能のみを肥大化させる恐れがあり、
国民の代わりに国会議員が慎重な審議をするという間接民主制の存在意義を軽視し国民主権の後退につながります。
※「党議拘束」とは、国会の採決で政党が所属議員の投票内容を拘束することで、党議に違反すると除名などの懲罰を受けます。
これにより各選挙区で民意を代表して国会に送られた議員も政党の「単なる一票」というモノとなり、民意の政治反映を難しくしています。
第66条
現行憲法
内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない。
改憲草案
内閣総理大臣及び全ての国務大臣は、現役の軍人であってはならない。
「退役した軍人」が、総理や大臣になる事が可能になります。
従来の解釈では、退役軍人も含めて強い軍国主義的思想を持つ者も統制対象としてきましたが、
この統制を緩めるものであり、戦争をする国に向けて足場を固める意味を持つ規定と言えます。
内閣総理大臣は国防軍の最高指揮官を務めたった一人で軍隊を統制する権限を持ちます。
そこに現役軍人のトップなども形式上、軍を退役すれば就任可能になる事は、
現行憲法での厳格な文民統制を壊す事になり民主主義の後退に繋がります。
※「文民統制(シビリアン・コントロール)」とは、政治と軍事を分離した上で、
民主主義の原則に基づいた政治によって軍事の完全な統制を確保すること。
第77条
現行憲法
検察官は、最高裁判所の定める規則に従わなければならない。
改憲草案
検察官、弁護士その他の裁判に関わる者は、最高裁判所の定める規則に従わなければならない。
国家権力と対立する弁護士を懲戒する事が可能になります。
最高裁判所長官の指名及び最高裁裁判官の任命は内閣の閣議により決定され、
最高裁裁判官によって構成される裁判官会議の議決に基づいて、
最高裁事務総局が全国の下級裁判所の裁判官の人事を決定しています。
この人事構造により「ヒラメ裁判官」と呼ばれる目が上ばかり見て最高裁など上の顔色ばかりうかがう裁判官が増え、
特に憲法判断など国の統治の根幹に関わるものや原発関連で政府に有利な判決を出す傾向があります。
憲法で三権分立が保証されていながら人事構造により実質的に政府の一部となっている最高裁判所の定める規則により弁護士を縛る事は
弁護士自治を壊し、国家権力から基本的人権を擁護し社会正義を実現するという弁護士の使命を果たす事を困難にします。
さらに改憲草案79条の2では最高裁判所裁判官の国民審査の方法を法律で定められる様になり、 例えば10年ごとの再審査を無くす等の方法で国民主権を後退させる事が可能になっています。
さらに改憲草案79条の2では最高裁判所裁判官の国民審査の方法を法律で定められる様になり、 例えば10年ごとの再審査を無くす等の方法で国民主権を後退させる事が可能になっています。
※「弁護士自治」とは、司法大臣が弁護士の監督権を有していた戦前、
法廷での弁護活動をする弁護士までもが治安維持法により言論統制の対象となり懲戒さらには
検挙・投獄された日本労農弁護士団事件などの歴史を踏まえて設けられた制度のこと。
現在、弁護士に対する懲戒処分をすることができるのは弁護士会だけです。
第83条の2
改憲草案 新設
財政の健全性は、法律の定めるところにより、確保されなければならない。
「緊縮財政」による、「基礎財政収支(プライマリーバランス)の黒字化」が、義務化されます。
デフレ不況の恒久化が、憲法によって定められます。
財政の健全化とは政府の支出(福祉)より収入(税金)を増やす事を意味します。
健全化と言うと良い事の様に聞こえますが実際には国民の生活は圧迫され景気が悪化します。
現代貨幣理論では自国通貨建ての国債発行による財政赤字は問題無く、むしろ景気向上に良い事が証明されています。
国債発行は増税の後回しで将来世代へのツケであるという指摘がありますが、
実際には国債は安全資産として経済規模の拡大と共に増える事が健全であり、
自国通貨建ての国債発行は中央銀行が買い入れを出来るので政府が財政破綻する事は無く、
実際には自国通貨のインフレのみが問題となります。
インフレ率は通貨の発行だけでは決定されず、財政支出の縮小や増税などで制御可能と証明されています。
※「MMT(現代貨幣理論)」とは、
「貨幣は単に中央銀行の負債の記録である(信用貨幣論)」
「貨幣の供給量(マネーサプライ)は企業の資金需要(景気)によって決まる(内生的貨幣供給論)」
「税は財源ではなく貨幣を流通させる仕組み(租税貨幣論)」を基礎とするマクロ経済学理論です。
MMTは社会の仕組みがより正しく見えるようになる眼鏡のレンズに例えられる経済分析の「理論」で、MMTを基にした「政策」とは別のものです。
MMT理論では通貨発行によるインフレは財政支出の縮小や増税などで制御可能と証明されていますが、
実際の政策ではインフレが起きた際に政府が増税などを世論の同意を得て本当に実行できるかが問題となります。
第94条
現行憲法
地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。
改憲草案95条
地方自治体は、その事務を処理する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。
地方自治体に「財産を管理する権限」と「行政を執行する権限」が無くなり、中央集権化します。
現行憲法において「地方自治の本旨」は「団体自治」と「住民自治」から構成されますが、
改憲草案では地方分権的要素である「団体自治」が制限され中央政府の国政に対する抑止力としての地方自治体の機能を減衰させました。
具体的には行政は「住民に身近な行政」の自治のみが改憲草案92条で保証され、
国政に関わる行政の内容は94条の改正により地方自治体が権能を有しなくなりました。
これにより例えばオスプレイ反対決議など国政とも関わる地方行政の決定は出来なくなります。
また、地方自治体の公有財産の管理の権能も削除され、一方で改憲草案96条の3にて地方自治の財政健全化が定められ、
地方行政による福祉以上の地方税を収める事が必要になりました。
※「団体自治」とは、自治体が国の下部組織ではなく独立した団体として自己の責任で行政などを処理する事で、地方分権の役割を果たします。
「住民自治」とは、地域の政治や行政を地域住民の意志に基づいて処理する事で、国民主権の役割を果たします。
「住民自治」とは、地域の政治や行政を地域住民の意志に基づいて処理する事で、国民主権の役割を果たします。
第96条
現行憲法
この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し
改憲草案100条
この憲法の改正は、衆議院又は参議院の議員の発議により、両議院のそれぞれの総議員の過半数の賛成で国会が議決し
衆参両院における憲法改正の提案要件を「3分の2以上」から「過半数」に緩和しました。
発議要件を三分の二から過半数に緩和する事により野党の合意を得る必要が無くなり
十分な審議を経ないまま国民投票に持ち込む事が可能になります。
日本の憲法は改正手続が厳しすぎるとの意見がありますが、
世界のほとんどの国の憲法は簡単に改正できない「硬性憲法」となっており、
アメリカやスイスなどの日本以上に厳格な改正手続の国でも改正は行われています。
また、国民投票法では最低投票率を明記していない為、
例えば50%の投票率の場合は国民の25%のみ賛成すれば改憲が可能となります。
令和元年7月に行われた第25回参議院議員通常選挙では投票率は48.80%となっており、
国民投票がこの投票率の場合、多くの国民が反対しても宗教団体や利害関係団体の組織票などにより改憲が承認される可能性があります。
第97条
現行憲法
この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、
これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。
改憲草案
全文削除
基本的人権が最高法規ではなくなり公益及び公の秩序が優先されます。
最高法規とは実定法体系の頂点で、他のすべての法令より優先する効力をもつ成文法のこと
公益及び公の秩序とは国益と社会秩序の事で人権同士が衝突しない場合にも適用されます
現行憲法には11条と97条に基本的人権の内容が記載されていますが、自民党改憲草案では97条の部分が削除されました。
自民党の改憲草案Q&Aではこれを内容の重複のためとしていますが、
実際には11条は「第三章 国民の権利及び義務」にあり国民が基本的人権を持つ旨が記されており、
97条は「第十章 最高法規」にあり基本的人権は憲法において最も優先されるべき内容である旨が記されています。
条文は似ていますが記載される章が違うためそれぞれ意味や役割が全く異なるものとなります。
自民党改憲草案ではこの97条が削除された事により基本的人権は最高法規ではなくなり、
前述の12条で記載された「公益及び公の秩序」により人権が国家によって制限される事になります。
第98条
新設98、99条
内閣総理大臣は、法律で定める緊急事態において、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発することができる。
緊急事態の宣言が発せられたときは、内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができる。
何人も、当該宣言に係る事態において国その他公の機関の指示に従わなければならない。
緊急事態の宣言が発せられたときは、内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができる。
何人も、当該宣言に係る事態において国その他公の機関の指示に従わなければならない。
ナチス・ドイツのヒトラーが独裁を築いた全権委任法と同じ権力を実質無期限で内閣に与えます。
国家緊急権は戦争などの非常事態において国家の存立を維持するために
国家権力が立法的な憲法秩序を一時停止して非常措置をとる権限の事で、
これを憲法に記載した緊急事態条項は戦争を想定した多くの国で存在しています。
しかし緊急事態条項は過去にヒトラー等がこの条項を悪用して独裁への道を進んだ様に
人権の制限など非常に危険な側面も持つため極めて詳細に条件が規定されています。
しかし自民党改憲草案ではこれらの規定で「法律の定めるところにより」という文言が多用されており、
発動宣言の条件などが与党によって好き勝手に変更出来るものとなっています。
さらに、自民党改憲草案では実質的に緊急事態宣言を永久に延長する事が可能となっています。
具体的には曖昧な発動条件の下で内閣の宣言のみで発動し、
与党が過半数を占める国会で必ず通る承認決議を出し、
発動中は衆議院選挙を自由に延期出来る為に常に与党が過半数の国会を維持出来るため、
民意を無視して永遠と延長を繰り返す事が出来るのです。
これはヒトラーの様に独裁への悪用が可能な非常に危険な事です。
最近では東日本大震災やコロナ等の災害を理由に国家緊急権によって人権を制限すべきとの議論もありますが、 実際には災害時には12条の公共の福祉により国家が人権を制限する事が可能であり、 災害対策基本法の警戒区域や検疫法の停留などの措置は公共の福祉により人の移動などが制限されているのです。 つまり災害においては現行憲法で法律のみで対応可能であり、緊急事態条項は戦争や独裁への悪用のために必要なものと言えます。 自民党は「改憲4項目」でまず最初にこの緊急事態条項を憲法に明記しようとしています。
最近では東日本大震災やコロナ等の災害を理由に国家緊急権によって人権を制限すべきとの議論もありますが、 実際には災害時には12条の公共の福祉により国家が人権を制限する事が可能であり、 災害対策基本法の警戒区域や検疫法の停留などの措置は公共の福祉により人の移動などが制限されているのです。 つまり災害においては現行憲法で法律のみで対応可能であり、緊急事態条項は戦争や独裁への悪用のために必要なものと言えます。 自民党は「改憲4項目」でまず最初にこの緊急事態条項を憲法に明記しようとしています。
※「全権委任法(授権法)」とは、ヒトラー内閣に立法権を与える法律であり、
ワイマール憲法48条の「大統領緊急令」による基本的人権の制限下にて当法律を成立させ、
この憲法の条項を悪用して合法的に憲法を骨抜きにした独裁体制を築きました。
第99条
現行憲法
天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。
改憲草案102条
全て国民は、この憲法を尊重しなければならない。
国会議員、国務大臣、裁判官その他の公務員は、この憲法を擁護する義務を負う。
憲法が、「国家権力を縛る鎖」ではなく、「国民を縛る鎖」になります。
政治権力は強大であるため、独裁的な権力の乱用を防ぐ為に国家を縛る鎖として憲法があります。
改憲草案102条に新たに記載された国民の憲法尊重義務によって憲法は統治の道具となり、
立憲主義に反して憲法が「国民が遵守するもの」になります。
自民党改憲草案では数々の現行憲法における権利が義務に変更されており、
国民の憲法尊重義務はこれらの義務を実効化する為の法律を制定する際の論拠になると見られます。
※「立憲主義」とは、政治権力を憲法によって規制しようという政治原則。
⚠️注意⚠️
国会法68条の2により改憲発議は衆議院100人以上と参議院50人以上の賛成が必要であり改憲発議が出来るのは自民党だけです。
つまり改憲発議案の最終決定権は自民党にあるので他の改憲賛成の政党が現在どの様な改憲案を提示していてたり加憲や創憲といった他の言葉に置き換えていても、 護憲でない政党に投票すれば結果的にその政党は自民党改憲発議案に賛成する事になります。
つまり改憲発議案の最終決定権は自民党にあるので他の改憲賛成の政党が現在どの様な改憲案を提示していてたり加憲や創憲といった他の言葉に置き換えていても、 護憲でない政党に投票すれば結果的にその政党は自民党改憲発議案に賛成する事になります。